いま、 目の前にある事を、 淡々と、やる。(3)

目の前にあることを、淡々と、やる

姐さん:
そういういろんなことがあって思うのは、私はずっと自分で「やりたいなぁ」と思ってたことがあって、あったはずなんやけど、ホンマにそれがやりたかったんかなぁって……。

そういうのもあって「願ったら叶う」という考え方が嫌いなんかなぁと思ってね。

こんな風に父と母の子どもとして生まれて、会社をやれとかやるなって言われても、私のちょっとしたことを喜んでくれたり、悲しんでくれたりする人がいるってことは、やっぱりこの会社をやっていてのことやから、会社に育てられた気がするよね。

今日、話をずっと聞いていて思うのは、仕事って、自分で選んでいるようで実は選んでいなくて、自分がこれしたい、これ欲しい…なんてところを超えたところで、我々一人一人が社会の或るべきところに配置されているような気がします。まさに、その人にちょうどいいところに置かれているのかもしれないですね。

世間の自己啓発的なものには、仕事は選ぶものとか、好きを仕事にする…という風潮もあるけれど……ちょっと違うんじゃないかな。

仕事とか、チャンスって、掴むものではなくて、やって来るものなのかもしれませんね。

大本

姐さん:
今、思うのは、やりたいやりたくないじゃなくて、こう咲きたいとか、ああ咲きたいではなくって、今目の前にあることを淡々とやること。

「今、ここ」を丁寧にやれば、もしかしたらその先に、何か人に教えるという次元に行く
かもしれないし、歌手になっているかもしれないし、それはわからない。それは、今を精一杯過ごすからこそ、運ばれていくようなものかなと思う。

たとえば、自分で「未来はこうなる」っていう設定をするやん?そこに行くために、今、自分の身に嫌なことが起こっているとしたら、先にそれをクリアしなきゃならない。理想の未来に行くための道順ね。

もちろん、嫌なことがあったら、うれしくはないよ。うれしくはないけど、そこに行くた
めに必要なことなんやって思うようになった。

それがどういうことかって、私もあまり見えてないけど、みんながわがままとか好き嫌いじゃなくて、あるべきところで今やることの大切さを、ちゃんと学び取れることが大事だと思います。

これから人を育てる仕事をするとしても、そんな人を育てるんかなぁということは思ってますね。

次の一歩は、自分でしか踏み出せない

姐さん:
それに、世の中って、1年や2年、3年とかいうスパンで見ると、感情の抑揚くらいしか見
えないもの。でも、10年もやっていると、いつのまにか「あ、なんか違う」と思ったときに、違う次元に行っているかもしれないなと。

今の自分を自分でどうにかしないと、次の自分ってない。その人以外にその人を誰もどうにもしようがないから。助けてくれる人はいるけど、最終的に、次へ行く一歩は、自分の足でしか出せないから。

そういう意味では、人として生まれて、1日を生き切るということ自体がすごいことだと
思うし、いい話を聞きに行きたいというのではなくて、いい話を語れるように生きるとい
うのが、私は好きかなと。だって、自分がやってきたことしか自信になりませんから。

どんなに人にいいことを教えてもらったり、聞きに行ったりしたとしても、それは人の経
験を聞いただけだから。それをエッセンスにして、自分で何かするとか、行動を起こすと
か。やはり、自分の経験からしか人間って成長出来ないなと思います。

私、今年は忙しいのもあったけど、色んなところに顔出ししなくなったんです。それはやっぱり、「自分を生き切ろう」と思ったところが大きいかもしれませんね。

大本:
本当に僕もお話を伺ってそう思います。外に理想の自分や生活を求めるのではなくて、今ここで、自分の内にこそ美しい花を咲かせたいですね。

本日は、貴重なお話をありがとうございました。島津工務店という場所に集まる人たちの美しさに感動いたしました。
<了>