やっぱり「人が好き」なんだと思います。(2)

そこまで不安もなくて、まぁ何とかなるだろうと

面白いですねぇ。お話を聞いてまた聞きたい事がいっぱい湧いているんですけど…(笑)

とりあえず、僕が思っていた「サクセスストーリー」と全然違ったことが一番面白いですね。

僕が想像していたのはね、城さんは、やっぱりここ堺市出身だから強力なネットワークを地元に持っていたに違いないって思っていたんですよ。「地のつながり」があったから、高知から帰って来た時に一緒に育った幼馴染である地元の友達に歓迎されるように溶け込む形で戻って…だと、勝手に信じ込んでました(笑)

大本

城さん:
全くないですよ。ホンマにそんなん全くなかったですからね。

堺にあった元々の「城さんネットワーク」と、城さんの得意技である「米」を掛け合わせたものが、このお店の「成功の原因」だと、僕は想像していたんです。

城さんが、高知の時にはやりたくても出来なかったお米屋さんの理想スタイルがあって、それを堺に帰って実現しようとした時に、城さんの幼馴染のネットワークが発展して、堺市行政も絡んだ「城さん応援団」がどんどん出来て…という「堺っ子エリート物語」を描いていました。

だって、これだけ素敵なお店じゃないですか。それにメディアへ取り上げられたり、イベントに呼ばれたりと、強い発信力もありますしね…。そういう順風満帆の旅を想像していたんです。でも、お話してくださったリアルは全然違ったので驚きました。

大本

城さん:
嫁、子供に平静を装っていましたが、日に日に内心、ホンマにめっちゃ大変でしたよ!堺に帰って来てからは、あっちにこっちにと、人にはいっぱい会いに行きました。無我夢中でした。

その半年の間にですか?

大本

城さん:
そうです。関西一円、東京にも行きました。米屋さんにも行ったことがあるし、八百屋さんも周りました。

で、こっちに帰って来て「米屋か八百屋とかの商売やろうと思ってんねん」って言った時にね、「えっ?堺で?米屋?」って。……(鼻で笑われる)といった感じでしたね。飲食店やったらまだわかりますが、米屋とか八百屋って…。

しかも、いくら堺が地元だって言っても、二十数年ぶりに堺っ子になるわけですから、人脈なんてものもなくて。そのとき、知ってる人なんて、兄貴かオカンくらいか、でしたし…ホンマそんな感じでしたよ。

でもまぁ、そこまで不安でもなかったんです(笑)。まぁ何とかなるだろうと思ってましたね(笑)。

というのも、ちょうど40歳になる年だったので、「40歳やったら、これから10年間、無理くり頑張っても、俺まだ50歳やろ?50歳になってからでも、なんか仕事やろうと思ったら多分いけるんちゃうかな?」って思ったんです。貯金も全くゼロではなかったので、バイトを朝も夜もやれば、別に何とかなるんじゃないかって。(笑)

ただ、子供に対しては「ホンマごめんな」って気持ちが、当時めちゃくちゃデカくありましたね。親の都合でこっちに引っ越してきているわけですし、ましてや上の子は中3の時でしたから…。それでもまぁそれなりにちゃんと育ってくれていますから、感謝しかないんですけどね。

でも、なんかこう、開業して間もない頃からたくさんの方にお声掛け頂けたんですよ。「〇〇イベントがあるんです、参加しませんか?」って。普通、イベントって自分から探して応募、抽選からの出店…みたいな感じやと思うんですけど、そういうのが今までこの方、開業してから一回もなくて。思い返してみても、本当にたくさんの方々からのありがたいご縁をいっぱいいただきました。

イベントのオファーって、友人関係からもありました?例えば、先ほどのデザイナーの方や木工の方とか…

大本

城さん:
そこからではないですね。新しいご縁からです。でも、その自転車屋さんは、ちょこちょこうちの店の事を色んなところで宣伝してくださっていたようで。去年やった「無印良品」さんとのコラボイベントも、自転車屋さんからのご縁でした。しかも、その無印良品さんとのご縁は、うちの娘が通う高校の多くの生徒さん達の現場、販売実習へとつながっていきました。

 

そうなんですか。ホント、プレスリリースをどうしておられるのかな?って、僕はずっと不思議に思っていたんです。

だって、これだけテレビにも出たり、雑誌取材もあったり、お店が漫画になったり、あの無印良品さんからコラボを持ち掛けられたりしているでしょう。

だから…「すごいコネ」と「練りに練ったマーケティングプラン」の戦略戦術をね、作戦展開されていると想像していたわけです。

大本

 

城さん:
ホンマに何にもしてないんすよ!(笑)

「トラとウサギの茶飯事」さんって、他人から見たら本当に羨ましいお店なんですよね。

「どうしてこんなかっこいい店が出来るの?」とか、
「どうして無印良品から依頼があったり、テレビとかが取材に来たりするの?」って、

きっと、みんな普通に思っていますよ。僕もこうやって本当のお話を伺うまでは、いわゆる「世の中にある答え」みたいなものから城さんの成功の答えを探していました。

「マスコミにコネがあって営業に行ったのかな?」とか、そういう風にやっぱり考えちゃったんですよね。テレビ局も、やっぱりニュース性がないと取材には来ないし、「店を紹介してください」ってお願いしたところで、じゃあ金出せ、広告出せっていう話になるわけですから。

これは奥さまの直子さんからお聞きした話ですけど、テレビ取材が来られて城さんの話を聞いた時に、「このご夫婦だけで2時間の特番が作れます!」ってディレクターの方が興奮していたらしいですね。それくらい、ご夫婦の考え方や「人生そのもの」がものすごく輝いて感じるんですよね。

先ほど「営業したことがない」っておっしゃっていましたけど、きっと、夜の海に煌々と灯りを放つ灯台みたいに周りからは城さんが光って見えているんですね。だからこそ、色んな人やお話が磁石で引き寄せられるように、ここに集まって来るんだと思うんです。「営業しない」を可能にしているのにはちゃんと理由があって、本当に何もしていない訳ではないんです。城さんは商売で必要なことを人の何倍も実はやっているんです。僕はもうさっきから驚きっぱなしです(笑)。

大本

 

自分が好きなことしかしてないんです

城さん:
いや.…。そうなんですかね。ただ、思うのは昔って販売スタイルでも「ワクワクドキドキの売場づくり」みたいなのありましたよね?そんな感じで、普通に楽しく(商売を)やればいいんじゃないかなと思うんです。基本的に、僕自身、理念やビジョン、短長期計画など難しいことが一切出来ないんです。

そうそう、僕がすごい引っかかっているのが、「仕事ってめっちゃしんどい事ですよね」という考え方なんですよ。そういう雰囲気って世間にあって、すごい長けた人でもそんな風に言いますよね?僕は「仕事、嫌なんですよ…」なんて言っている人がいると、「じゃあ、辞めたらいいやん」って思うんです。

僕は、「米売らなあかんから」とか、「仕事やから」とかで、嫌々ご飯食べたことなんてないですよ。「このご飯めっちゃ美味いやん!ちょっと食べてくれへんかなぁ」なんて気持ちで、お米は販売するもんやと思うんですよね。

お店のことを発信する時、たまにアイデアや表現って出さなアカンと思うと、水滴の出ない空雑巾を絞って絞って絞り出すように…知恵を絞り出すこともありますけど、基本的にやらされている事はなにひとつなく、せなアカン事はなく、やりたいやっておきたい、たくさんの人に知ってもらいたい、伝えたい、伝えてもらいたい、そして喜んでもらいたい。二人だけでいつも考える事が多いので、毎日タイムオーバー。なんで閉店後、シャッター閉めてからひっそりと精米を楽しんでいます(笑)。時には夜中になることもしばしば。

精米を、ですか?

大本

城さん:
そうそう。飲食店さん向けのお米を大量精米します。

また、汚いお米を取ったり、ちょっと欠けてたりするお米をピッキング。お客さんが居てはる時間は、どうしても注意散漫で集中力が切れてしまうんでね。ちゃんと測っているつもりでも、たとえば1.4kgが1kgになっていることもまあまあ経験あり(苦笑)。安心してください。毎度、2回量るため、お客様にご迷惑をおかけすることはありませんので(笑)

お客さんからお金を貰ってるものに対してそんな事は出来ないので。そうなると、やっぱり店閉めてからやないと出来なくて。だから、体力的にキツい時もありますが、僕は別にそんなん全く苦じゃなく、毎日のやったった感がデカいんです!

そうそう。それは、なぜかって、「自分が好きな事しかしていないから」です。この店も、自分が好きでやってるわけなんですから。ただ、ただ、見直すべき点があり、子供がほったらかしになっている事が多く…反省せなアカン点ですね。

⇒vol.3よいお客さんに恵まれるのには理由がある