人が好きなんです
確かにその通りだと思います。城さんのお店は「計算を超える調和」で創出されていますね。
城さんのやっておられることも、その結果も、すべてが計算して出来るようなことじゃないですから。なぜ?そうなるのか・・理由はわからないですけど、この店の心地よさとか、また来たくなるところとか、そういうのは、城さんが話された人生すべてが縒り合された糸のようにして「計算を超える調和」をもたらしているからこそでしょうね。
(お店の様々な要素を)単に全部真似をしたからって、絶対に同じような繁盛店が作れる訳がないですね…。このお店にあるお米の置き方から、聞こえてくる精米する音にまで、城さんの想いや考え、人生の歴史といったようなモノが全部、練りこまれているっていうかね。
そういうここまでの間に色々あったことが「計算を超える調和」を生み出してこんな素敵なお店が出来たと思うんですけど、ここまでに起こった変化を一番大きく支えてくれて、今の自分に至らせたものって、城さんはいったい何だと思いますか?
大本
城さん:
う~ん……。人が好きっていうくらいですか…。
結局、人は一人では生活出来ないですよね。絶対に何かしら人が携わっているでしょう?例えば、お茶を出すことひとつにしても、誰かが、水と茶っぱ、湯呑みも用意しているわけですから。
だから、そうやってどうせ人と接するんなら、僕は機械的なのって嫌なんですよね。争いも嫌いやし、皆「ふわっ」とやったらえんちゃうの?って、思ってるんです。
「なんか気持ちいいな、お前の笑い方は」なんて言っていただけることもあるんですけど、自分が笑っている時に皆が笑ってくれるって「ええなぁ」と思います。
僕を求めてこの店に来てくれた人に対しては、1000%でも2000%でもドーンと返すくらいの気持ちでいます。
お客様には一人暮らしの方も多くいらっしゃるんですけど、「はい、こちら1,000円です。はい、ありがとうございました」なんて機械的な対応ではなくて、「今日も暑いですね」とか、そういう一言や、ちょっとした会話を、その時間に戴せれるだろうと思ってるし、そういうところが、温もりであったり、人が好きというか…そういう基本的な事なのかなって思います。
城さんは初めの蝋燭なんですよ
城さんは、お客さんとずっと喋ってるんだって、城さんのお嬢さんが仰ってましたよ(笑)。
お客さんが、お店に入ってきたときも、商品を選んでいる時も、レジで会計しているときも、お帰りになるときにお見送りでお店の外に出てからも、ずっと話しているお父さんを見て本当に驚いたんですって(笑)。
たしかに、そんな城さんは機械の真反対ですよね。僕はインタビュー前に、最澄さんが残した「一遇を照らす」の話をここでさせてもらったんですけれど、その「一遇を照らす」ってことを今日はずっとお話くださっているんだなって思いました。
「人は一人では生きられない。」
「人と人をつなぐ。」
そういう気持ちが、お互いがいい関係になるような紹介の連鎖を生んでいく。
その始まりは、灯りの中にある蝋燭の一本と同じで、城さんという蝋燭の火があって、城さんが何かしら動くと、その火が次の人の蝋燭に分けられる。その灯りを渡された人がまた次の人を明るくする…っていう風に広がっているんだなあーと感じて、「あぁ。城さんは一遇を照らしているんだなぁ」って、ずっと眩しく見ていました。
城さんが「人は一人では生きられへんから」っていう、そういう優しい気持ちで人と関わって繋がって来た事が、ドミノ倒しみたいに人の気持ちを倒して、そのつながりの先でお店を知った方がまたここにお越しになる。
それってやっぱり僕のイメージでは、城さんが「初めの蝋燭」なんですよね。城さんに触れた人が、火を分けてもらって、その人も光になるんですよ。で、渡された人がまた次の人に優しい気持ちで火を灯して光を増やして行ってるんですよ。それって、人の繋がりが本当に光って、灯りになって、社会を明るく照らしているんだと思うんです。
「トラとウサギの茶飯事」さんは素敵なお店だ。と世間に広がりながらも、なぜ店主の優しさが広がるのか、なぜお客の気持ちが明るくなるのかは、なんとなくで、よくわからないような形でそっとあるだけ…そんなすごい仕事をされていると思いました。
大本
人間らしく感情を感じることは、残していきたいですね
大本
城さん:
そうですね。お米って日本になくてはならない歴史あるものですよね。今は輸入量よりも廃棄量の方が多くなるなど、食生活やライフスタイル、米を取り巻く色んなものが変わってきています。
でも、色んな食べ物がいっぱいあったにも関わらず、お米って日本に残るべくして残ったものだって専門家の方にも言われましたし、御神事でも先ず神様にお米を献上するっていうのがあって、この国では全部、お米ありきなんですよね。やっぱり大切なもの、日本人に適した物が残っているわけです。
これから5年、10年周期で、たぶん、食のスタイルも変わるでしょうし、何が残っていくのかはまだ全然分からないんですけど、でも「昔を振り返った方がいいよ」っていうことも、いっぱいあると僕は思っています。
サプリ等もありますが、栄養「補助」食品なだけであって、やっぱり食は「形あるもの」を「恵み」として僕らはいただいている訳です。
じゃあ、その「形あるもの」はどうして出来たのか?
それは土があって、水があって、太陽あって、雲があって…など、そういう自然が全てあってこそ出来るもので、それを僕らは「恵み」として頂いているわけです。米屋としては、そこを伝えるのが食育やと思ってるんです。それで、来年、あるところから僕へ講師の依頼が来てるんですけど、そういった活動からも仕事を次のステップへとつなげて、広く皆さんに「お米のこと」を伝えていきたいですね。
大本
城さん:
そうですね。感情かな?
大本
城さん:
いや、もう「喜怒哀楽」ですわ。それだけでええんちゃいますかね。
悔しいなら悔し涙は出すし、嬉しかったら笑う、美味しいっていう感動の笑顔もあったり。そういう感情って大切だし、ありがとうとか、ごめんなさいとか、今、ほとんど皆さん、言わないんですけど、氣持を言葉に出す、頭を下げて手を合わせることとか、態度で気持ちを伝えるって、すごい大切な行動原理だと思うので、
そういう感情を捨ててしまったら、怖いなぁと思ってます。人間らしく感情を感じることはこれからも守らなあきませんね。自分自身、身近な家族に対して全く出来てなく、子供に嫁にごめんなさいですが(汗)
城さんは「米を売る」って仕事を通して、人に伝えておられることがあります。
それは、僕が思うに「生き方」ですよ。
「人間。何を大事にするのか?」ですよ。
このお店の「計算を超える調和」をもたらしているのは、まさにそこだと思います。
感情を大事にする。人として、人である所以っていうものをね、大事にしていらっしゃることが、そのまま「城さんの生き方」なんですよね。それがちゃんとあるからこそ、道を選ぶときに、右か左かが城さんには分かる訳です。そして、人を大事にという想いで選んだ道に気持ちのいい風が吹くんですね。
今日は、ものすごく勉強させていただきました。素敵だなぁ。「トラとウサギの茶飯事」様の益々のご発展を確信して、心よりお礼申し上げます。
今日はお仕事がお忙しい中にお邪魔したにもかかわらずたくさんのお話をくださいまして、感謝の氣持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
あ、城さん。お米選んでもらえますか?笑
大本
<了>